宇治の志津川福祉の園 養蚕事業の新分野に挑戦 カイコ班がまゆ生産 美容成分(紫外線カット)の抽出も自前で

2018.01.25
 全国的にも例のない、障がい者施設でのカイコ事業化(養蚕)に取り組んでいる宇治市志津川西山、障害福祉サービス事業所「志津川福祉の園」(藤本一幸園長、43人)で、紫外線をカットしてカイコを守る働きをするまゆ(繭)に含まれる「セリシン」と呼ばれるタンパク質の成分を抽出する取り組みが始まった。新分野への挑戦のカギを握るのが一個ずつのまゆの不純物や毛羽を取り除く利用者たちの丹念な手作業。「セリシン」は紫外線カットだけではなく保湿性にも優れており、その用途は幅広い。市場性も高い新分野への挑戦に、園では「利用者の工賃アップにもつなげたい」と期待を寄せている。

 志津川福祉の園は社会福祉法人・山城福祉会が設置主体となり1996年に開設。知的障がいなどを持つ人の社会参加と自立をめざし陶芸・織物・縫製などの作業を通して地域に開かれた施設運営に努めている。

 カイコを育てる養蚕事業は、まゆや生糸の生産による採算性(自立支援)、生きものの世話を通したメンタル面での効果、養蚕のノウハウの受け継ぎを通した地域交流などを見据えて試行導入した。

 京都工芸繊維大学の付属研究機関が環境・生態系にやさしい人工飼料による周年飼育技術を開発したのをふまえ、07年から三菱財団の助成を受けて調査研究に着手。無菌飼育室の設置や、郵便事業㈱からの補助金なども受け、カイコが途中で死なず、まゆを作るまで成長する割合は日本最古の原種で市場性も高い最高級の「小石丸」でも80%以上を達成した。

 現在は20代~40代の男女7人とスタッフ3人がカイコ班として、交代で月5千個のまゆ生産ができる技術を確立している。

 付加価値の高い美容成分の抽出は、化粧品メーカーと提携して進めている熱帯性のカイコ(蚕)が作る「黄金まゆ」を使った美容クリームの製造を契機に浮上。京都工芸繊維大学のアドバイスをふまえ、不純物や毛羽を取り除いた「黄金まゆ」での「セリシン」抽出を繰り返し、そのノウハウを取得。府の補助金を申請し、抽出器具の購入にも弾みがついた。

 取り組みから12年にわたり関わってきた原智佳子主任(58)は「試行錯誤の連続だったが、エサの食べ具合や成長の度合いなど小さな変化をカイコ班の仲間が注意深く見守り、生き物を育てることが張り合いになっていると感じられたことが、私たちを後押ししてくれました」と話す。

 目下は理系を専門にする支援員の川北優陽(ゆうひ)さん(29)と「セリシン」抽出工程の準備を進めており、カイコ班で活動する利用者の鷺晋也さん(39)は「毛羽を取ってきれいになった黄金まゆで新しい製品が生まれるのはうれしい。たくさん売れてみんなの工賃が上がるようになってほしい」とにっこり。

 全国的にも数少ない養蚕所として実績を上げている障がい者施設での新たな取り組みに、藤本園長は「事業継続の励みになる。作業工程を軌道に乗せ、付加価値の高い原料の安定供給によって利用者の工賃アップにつなげたい」と話している。

【写真はハサミを使って純度の高いまゆ玉をつくる作業工程】